第1章 初恋
「あいつから散々聞きまくっただろ」
「いや、まぁ、ローさんの昔馴染みってのは聞いたけど…」
シャチが言い淀む。言葉の先を今度はペンギンが引き継ぐ。
「なんつーか…おれらの見間違いかもしんないんだけど…てか髪色的にもありえない話じゃないかもしんないけど……」
「…なんだ」
「リアの髪、太陽の光を反射させてキラキラしてた気がして…」
そういえばこの2人は甲板であいつの髪が陽の光を受けてるのを見てたな…。しかしそれだけで何者かまで聞いてくるか?と逡巡したところで、この2人はベポの月の獅子《スーロン》化も見たことがあることに行き着く。
何かある、と考えてもおかしくないな。
しかしリアが何者であるかは言うことでもないだろう。
何せこの島を出てしまえばもうおれ達もリアも互いに関わり合うことは無い。
「髪の色のせいだろ」
おれの返した答えに一瞬、固まる2人だったが、「そっか。そうだよな」と納得したような返事をしてそれぞれの持ち場へ行く。
おれも知ってそう経ってないリアの秘密。
場合によっては生死に関わる秘密だ。
そう易々と仲間と言えど教えるわけにはいかない。
白の一族。
神の一族。
ミンク族の歴史も公になっているものは少ない。ましてや伝記はかなり少なく、口伝も多くは語られていない。
ベポのように島を出るのも珍しいらしい。
そのミンク族よりも恐らく希少種。
この世界で『神』と言ってまず思い浮かばなくてはいけないのが、腹立たしいことに天竜人。
その天竜人に並ぶものとして考えればいいのだろうか。
天竜人と違って特殊な力を持っている分、白の一族の方が神に近い気はするが……。
…なんだ神って。らしくねェ。
自分に呆れてため息をこぼし、自室へ足を向ける───────
「リアちゃん、昔馴染みさんとは話せたかい?」
お店に着くと女将さんが言う。
「はい!ありがとうございました。おかげさまでたくさん話せました」
昨日は女将さんが片付けはいいからと帰してくれたおかげで、ローくんともたくさん話せた。
起きてすぐ手術をされたことは言わないでおく。
…すごい心配されそうだもん。
(ちなみに艦に向かう時にわたし達と入れ替わったのは小石だったようでら部屋にぽつんと落ちていた)