第1章 初恋
遠くからとは??と首を傾げると、シャチくんが説明してくれた(シャチくんたちもペンギンくん同様、敬語も『さん』もいらないと言ってくれた)。
「おれらわっかりやすいツナギだからさ、送り届けるにしても目立つかもしんねェから離れたところからついてけって言われてて」
…ローくんの指示らしい。
「えっと…1人でも大丈夫だよ…?下ろしてさえもらえれば…」
「そうはいかねんだ」
「おれらが怒られちまう」
「場合によっては解体(バラ)される」
バラされる?!厳しいね?!
なんだか重大すぎる気はするけど船員さん達の身の安全のためには従うしかなさそう。
「じゃ、じゃあ、よろしくお願いします…」
「「おう!」」
来た時と同じように外套のフードを深くかぶり、来た時とは違ってラダーを慎重に降りる。
お、おお…ちょっと怖いな…
船の乗り降りはタラップしか経験がなかったわたしにはラダーは不安定に感じて怖かった。
おずおずと降りて、よし、と艦から体を逸らすように振り返ると壁にぶつかった。
「随分マヌケな姿だったな」
「っ!ローくん!」
用事があったはずのローくんが目の前にいる。どうやらわたしがぶつかったのはローくんだったらしい。そしてわたしはラダーに必死すぎてその気配に気づかなかったと…いや、マヌケって!
「別件、って言ってなかった?」
「それはもう済んだ。今から仕事か?」
「うん。1回家に戻って…あ!わたし見送りなくて大丈夫だよ。船員さんたちにも遠くから見守ってもらわなくて大丈夫だから」
「そうだな。今からおれが送るしな」
「え???」
なんで、と言う前に上を向いて甲板から覗く船員さんたちに「すぐ戻る」と言ってわたしの背をさりげなく、家の方へと押した。
押されるままに歩き出す。
「もしかしてわたし経過観察?されてる?」
「あ?」
「術後の…みたいな」
「…そんなとこだ」
術後観察なら断固拒否する訳にもいくまい。
大人しく家まで送ってもらおう…。
「余計なこと話してないだろうな」
「え?」
並んで歩いていると唐突に言われた。