第1章 初恋
ローくんとの思い出がたくさんあって、ちょっと羨ましく感じた。
良いことだけじゃなく、辛いこともあっただろうから、簡単に『羨ましい』って思っていい事じゃないかもしれないけど…。
「ちょっと足とか、触っていい?」
「うん…?」
「麻酔抜けてきたかどうか」
「あ、うん」
足先から順に揉みほぐすように触られる。
人にそんな触られることないから、少しくすぐったいような、変な感じがする。
でもだんだんと体温が伝わるのがわかって、揉みほぐされた所から軽くなっていく気がした。
「触られてるのに分からないってとこ、ない?」
「うん、大丈夫」
「じゃあもう歩けっかな。立ってみる?」
「うん」
返事をしてベッドから立ち上がると、よろける前に腕を支えられた。
「ありがとう」
「んーん」
重かったのが嘘のように足が軽くなった気がする。
確認しながら揉みほぐしてくれてたのかな?
「ほんじゃ、船探検と行きますか」
「お願いします!」
さすがに不在の船長室は案内して貰えなかったけど、その他の場所は一通り探検させてもらった。
男部屋と女部屋と分かれていて、今は1人しか女性がおらず(イッカクでいいよ!って言ってくれた)、一人部屋となっていたけど、いつ新しく人が入ってきてもいいようにと片付いていた。
一通り回ってから食堂に戻ってきて、ペンギンくんが紅茶とクッキーを用意してくれた。
2人で話していると、探検中に会った船員さんがひとりまたひとりと食堂に入ってくる。
それぞれのその日の役割や仕事を終えたらしく、腹拵えと称してわたしの周りに集まってくる。
「キャプテンの知り合い?!へ〜!!!」
「急にオペって言われたの?」
「キャプテンって親のことなんて呼んでたの?」
など質問攻めにされたけど、大体はローくんの幼少期についてだった。ローくんすごく好かれてるなあ。微笑ましくなるや。
そうこうしていると、仕事の時間が近づいていた。
「あ、わたしそろそろ仕事に行かないと…」
「そっかそっか!じゃあおれらも行くか」
「遠くからだぞ」
と口々に言う。