第1章 初恋
「って言われてもね〜!」
とペンギンさん、もといペンギンくんがはっちゃけた。
まだ立ち上がってウロウロする程にはなってないわたしは壁を背にベッドに腰掛けている状態。
「話すよなあ〜!」
「そうだね」
2人になってから敬語も『さん』もいらない、と言われた。
さすがに昔なじみのローくんでさえ『くん』呼びなのに昨日今日初めて会った人を呼び捨てというのは躊躇われたので『くん』呼びにさせて頂いた。
「キャプテンとどういう関係?昨日出会ったにしては距離感近いよな?」
ペンギンくんはというと、ローくんが来る前にも座っていたベッド脇の丸椅子に座っている。
「昔、同じ町に住んでたの。珀鉛病が本格的に地域病になる前にわたしは島を出たんだけど……」
「あ〜…珀鉛が溜まってたのはそれでか〜。ローさんとは違って生まれはフレバンスじゃなかったんだ?」
「そう。珀鉛病は代々フレバンスで生まれ育った人達が発症していくから……わたしは短い間住んでただけだから少しで済んだみたい」
きっと珀鉛が微量でもかなりの有毒だったとしたらわたし達家族もフレバンスで全員死んでいただろう。
ローくん達の事がある。そうじゃなかったことを手放しで喜ぶには……
「ペンギンくんは?いつ頃ローくんと出会ったの?」
「おれはっていうかおれら、なんだけど」
「?」
「シロクマ覚えてる?」
「うん」
昨日お店にも来ていて、頑張って表情に出ないようにしていたけど初めて喋る動物を見たから内心ものすごく驚いた。
そう話すと、「いや、隠せてなかったよ」と言われた。あれれ。
「まぁミンク族ってんだけどさ。あいつ、ベポって言うんだけど。と、シャチのおれら3人は同時期にローさんと出会って…」
ペンギンくんの話によると、ローくんが『コラさん』と死別したあとに出会い、頑固な発明家のおじいさんにお世話になっていたらしく、この潜水艦もそのおじいさんから譲り受けたものらしい。
その頃の話をするペンギンくんはとても楽しそうだった。
自分より年下だというのに男気があり、強くて頼り甲斐のあるローくんを慕うのは当然の結果だったと嬉しそうに話す。