第1章 初恋
「医務室とオペ室は廊下通らなくても扉で繋がってるからさ、キャプテンがあんたを抱えてこっちに寝かしとくって。今別件でいないけどすぐ来るよ」
ニカッと笑うペンギンさん。
……抱えて??
「シャンブルズじゃなくて…?」
「抱えて」
じわりと背中と髪の生え際に汗が滲んだ気がする。
抱えて、か〜〜〜〜〜〜〜!
恥ずかしい…!体重を知られたようなものじゃないか…!!
本調子だったら確実に今わたしは真っ赤になっていただろう。
しかし幸か不幸か、まだ麻酔が抜けきっていない体だと生理的反応が遅いから大丈夫なはず。くっ!
そんなことを密かに悶々と考えていると、再び扉が開く音がした。
「キャプテン!おねえさん、目覚めたよ」
「ああ、みてェだな」
ベッド脇の椅子をペンギンさんがローくんに譲り、傍に控えるように立つ。
シャチさんは呼びに行ったあと、何か用でもできたのか戻ってきてないみたい。
「調子はどうだ」
「頭と体が重たい……」
「麻酔だな。抜け切るまで艦に居ていい。仕事まで時間まだあるだろ?」
そう言いながら時計を見せられる。
確かにまだ余裕はありそう。
仕事前に家に寄っていつものバッグを取りに戻るだけだから、今すぐ帰らなきゃ、ということもない。
「…ここで?」
「?」
「せっかくだから艦を堪能したいって言ったら怒る?」
厚かましいお願いをしてみた。
だって医務室のベッドなんて寝てる以外することなさそうなんだもの。
出来れば、この先乗ることがなさそうな海賊船を探検してみたい。
ローくんの艦だから安全そうだし。
「……昔から思ってたが…割と怖いもの知らずだよな」
フッ、と鼻で笑われた。
「そんなことないと思うけど…」
「おれは今から出なきゃならねェ。ペンギンに任せることになるがいいか?」
「え、それは申し訳ないかも…」
「おれだったら大歓迎だぜ」
ペンギンさんがローくんに親指で指され、胸を張った。
「ってことだ。動けるようになったら探検でもなんでもしてくれ」
そう言って椅子から立ち、医務室を出ようとした────ところで振り返った。
「余計なことは喋るなよ」
とわたし、だけでなく、ペンギンさんにも指と目で示した。