第1章 初恋
「「アイアイ〜!」」
と2人は元気よく返事する。
え、そんなあっさり…?
「って、酒場のおねえさんを??」
「ああ」
「補助は?」
「いらねェ」
手術されるわたしを置いてけぼりに3人はどんどん会話を進めていく。
その間、暇なわたしは出来るだけ柵には近づかないようにしながら周りを見渡していた。
時々清掃中の船員さんに会釈する。みんなやっぱりお揃いのツナギを着ていて何だか可愛らしい。
「微量だが珀鉛が溜まっているからそれを取り除くだけだ。何も無いだろうがオペ室の外に待機してろ」
「「アイアイ!」」
リア、と2人と話が終わったローくんがわたしの方を眩しそうに見た。それにつられてペンギン帽の人とシャチ帽の人もわたしの方を見て驚いた顔をしている。
あ、晴れてるから髪が……
フードを被り直して、3人の元へ近づく。
「よろしくお願いします」
オペをしてくれるローくんにはもちろん、ほかの2人にも頭を下げた。
何せわたしは今、海賊船に『お邪魔』している。
皆のキャプテンを無断外泊させただけでなく、きっとそれぞれやらなきゃいけないことがあるだろうに急なわたしのオペが入ってしまったのだ。
礼は欠かせない。
「ローさんのオペは完璧だから心配ないぜ。おれはペンギンってんだ」
そう言って右手を差し出す。
その手にわたしも右手を差し出し、握手を交わす。
ペンギンって名前だからペンギン帽をかぶってるのだろうか?
だとしたらもう1人は……
「おれはシャチ。もしかしてローさん、おねえさんの家に泊まってた?」
「えっ、あ、そうです…無断外泊させてしまって……」
やはりもう1人も帽子が名を表していた。
シャチと名乗ったその人も同じように右手を差し出してきたのでわたしも右手を差し出し握手を交わす。
無断外泊って、と2人して笑われた。
「行くぞ」
やり取りを見ていたローくんが目配せする。
2人は「キャプテンについてって」とわたしの背中を押し、送り出す。
甲板からどんどん奥の方へ入っていき、プレートに『手術室』と書かれた扉をローくんが開け、わたしを中へと促した。
わたしの後ろにいた2人は部屋の外で扉を挟んだように立ち、背を向ける。