第1章 初恋
港に着くと、目が覚めるような黄色い艦(わたしが普段見る船とは違う素材に違う形だけど)が停泊していた。
…目立つなぁ…。
艦を前にラダーを下ろしてもらうのかと思いきや、ローくんはおもむろに足元にあった石を艦の方へ空高く投げた。
え、なんで?
と思った時にはまたサークル状の薄い膜が先程よりも大きく広がり、船さえも包んだ。
腰にローくんの腕が回り、密着するように引き寄せられると瞬きの間にわたしは艦の甲板にいた。
なるほど、石とわたしたちの場所が入れ替わったんだ……ん?じゃあわたしの家を出た時は何がわたしたちと場所が入れ替わったのかな?
先程とは全く違う景色に一拍遅れて胸が高鳴っていく。
「わぁ…!すごい…!わたし海賊船に乗ってる!」
興奮で声が大きくならないようにか、自分でも無意識のうちに自然と両手が口元にいく。
港も少し風があったけど、船に乗っただけでその風は一段と強く感じる。
「キャプテン!!!どこ行ってたんだよ〜!!!!」
その声に気付き、周りを見るとお揃いのツナギを着た人が数名いた。
キャプテンとはローくんの事だろう。ハートの海賊団の船だもの。
この場に現れた瞬間を見ていたのか、今ローくんの腕がわたしの腰から離れていくのを見たのか、ペンギン帽の人とシャチ帽の人がヒューヒューと囃し立て始めた。
「キャプテンが艦に女連れてくるって今まであったか?」
「初めてじゃねェか?」
「だから昨日は帰ってこなかったのか」
その様子にローくんは嫌そうに溜息をついた。
ビュウ、と一際強く風が吹き、その風にフードがさらわれる。
「わ、」
抑えようとしたが、間に合わずフードから頭が顕になる。
「あーーーー!!!!!!」
ペンギン帽の人が大声を出し、思わず肩が揺れた。
「昨日の酒場のおねえさんじゃん!!!」
その声にシャチ帽の人が勢いよくこっちを見た。
「ほんとだ!!!!!キャプテンも隅に置けねェなァ!!!」
「バラされてェのか?」
「「滅相もございません」」
ギロリと音が聞こえそうなほど睨まれた2人は勢いよく腰を曲げた。
ローくんはその様子にもう一度ため息をつくと「今からオペをする」と2人に告げた。