第1章 初恋
「何唸ってるんだ」
「んぅ?」
寝相をのっそりと仰向けからうつ伏せになるようにしてアラームを止めた体勢のまま声がした方を向く。
あ、
「ローくん」
ローくんがいるんだった。
ローくんの体勢は枕の下に片腕を突っ込んでいる状態ではなくこちらを向いた状態で腕を組むようにしていた。
……寝てたはずだよね?腕しか変わってないってどれだけ寝相いいの?
しかし、昨日は夢に出てきたローくんが、今度は成長した姿で横にいるとは……。
その事実を実感し、嬉しくなってくる。
きっとわたしの口角はすっかり上がりきっているに違いない。
「…何ニヤついてんだ」
うふふ、ローくんってば「何」「何」ばっかだね
「ん〜?おはよぉ」
「良いながら沈んでってるぞ」
「起きる、起きるよ…」
「ああ。そうしろ。じゃないとそのまま艦に連れてくぞ」
ん?艦?
「今、艦って言った?」
「言った」
「連れてってくれるの?」
「行きたいのか?」
「うん」
なら丁度良かった、と何かを企むような少しあくどい顔をする。
え、何…
のっそりとローくんは起き上がると、言った。
「オペするぞ」
え…?
その言葉に沈黙が流れたのは言うまでもない。
あれから怒涛にわたしは出かける、もとい、手術をされるがために準備をする。
「わたし、今日も仕事なんだけど」
歯磨きを済ませ、洗面所で着替えながらベッドに腰かけたままのローくんに叫ぶ。
ちなみにローくんは既に昨日着ていたシャツを着ている。
「心配するな。俺の能力ならオペした日にはもう動ける」
淡々と言うけど、そういう問題じゃないというか…。
しかし、聞けばわたしの体にも微量ながら珀鉛が溜まっているらしい。
フレバンス出身のローくんとは違って寿命に関わるほどのものじゃないこと、発症する可能性もかなり低かった為に今までわたしは無事に生きてこれたらしい。
けれど除去できるのであれば、した方が良いに越したことはない。
…ということで、急遽オペすることになりました!!!って言っても心の準備なんて出来るわけないでしょう。