第1章 初恋
次第に言葉尻が小さくなっていき、ついには規則正しい寝息が聞こえだした。
恐らく泣き疲れたのもあるのだろう。
寝るのを見届けたし、帰ることも出来なくはないが、今おれが出れば起こしてしまうし、ましてやタオルケットも同じものを使ってるから……と誰にともなくどうでもいい言い訳をする。
人の目がある。明け方とはいえ、誰がどこで見てるか分からない。
海賊であるおれがリアの家から出て行くのを見られるのも良いとは言えない。
それに気になることがある。
おれとリアが入るだけのROOMを張り、リアの体を隈無くスキャンした。
────あった。
リアはフレバンスにいた。
ということは微量ではあるが、珀鉛が溜まっていると思っていた。
血筋にフレバンスの者がいないが故に寿命が縮まったり、珀鉛病を発症したりはしなくとも、暮らしていたのだ─────必然と食器や食べ物から微量の珀鉛が溜まる。
幸い発症せずに少量が溜まっているだけだ。
おれが手術すれば何事もなく完治する。傷さえもつかないし残らない。
おれと同じように肝臓に溜まってるようだ。
リアが起き次第、事情を話して艦に来てもらうしかないな。
寝てるのを良いことにまじまじとリアの寝顔を観察する。
身体は正面を向くように仰向けだが、顔が少しだけ俺の方へと向いている。
月明かりにかすかに照らされ、髪やまつ毛がうっすらと輝く。
あァ、月の光ってのは太陽の光を反射してるんだったか?
規則正しく上下する胸。
薄く開いた唇。
ずっと見ていたい。
しかしリアの静かな寝息を聴いていると寝れる訳が無いと思っていたのに瞼が段々と視界を覆い隠そうとしてくる。
今だけは……この島にいる間だけは。
隣にいることを許してくれ───────
ピピ、ピピ、といつものアラームに手を伸ばす。
「ん゛〜〜〜」
パチッとは開かない目をなんとか開けるが、自分でもしかめっ面になっているのが分かる。
月明かりだったのが陽の光になり、眩しさが違う気がする。