第1章 初恋
ふと、大変なことに気付いてしまい、慌ててお風呂から出る。
バタバタと急いでタオルで全身を拭き、これまた急いで服を着る。
「ローくん!」
「騒がしいな」
ローくんはベッドにもたれるように床に座っていた。
上裸ではあるけど、バスタオルを肩から羽織るようにしてくれていて、先程よりは見える範囲がマシになっている。
「あの、無理言っといて何だけど!お泊まり、大丈夫だった?」
「は?」
「そのぉ…か、彼女さんとか、いない…?」
「…」
わたしの問いに何故か頭を抱えた。
「何だそれ」
「や、だって、もし彼女さんがいたら良い気しないんじゃないか?って思って……その…お恥ずかしながら恋人がいた事ないから……わかんないけど……」
「へェ」
ベッドに肩肘をつくようにしてこちらに向き直られる。
試すような、探るような目つきで。
「…いない?大丈夫?」
「どっちがいい?」
「えっ」
どっちがいい???
わたしの回答をニヤニヤと笑いながら待つローくん。
「いない方が……罪悪感とかない、かな?」
「そうか。じゃあいる」
「いる?!じゃあって何!」
なんで罪悪感、感じさせようとしてるんだ!
冗談だ、と笑うローくんも新聞では見れなかった表情だ。
やっぱり本物は違うなぁ。
もう、と口から零しつつ、ベットの方へ行き、枕を2つ、整える。
「まさかとは思うが同じベッドをおれに使わせる気か?」
「え?そうだよ?ベッドひとつしかないし、必要最低限しか置いてないし今までお客さんが来たこともないから来客用の布団もないし……」
よくよく考えずとも、わたしすごく考え無しにお泊まりを提案したなあ。
「あ、ローくんがベッドで寝て、わたし枕さえあればテーブルの方でも……」
「それは駄目だ」
「駄目なの?」
「駄目だ。せめて逆だろ」
「お客さんにテーブルで寝かせるのはないでしょ…」
お互いにジッと視線だけで戦うように睨み合う。
はァ、とため息をつかれたと思うと、
「分かった。同じベッドで良い」
と、ローくんが折れた。
やった!勝ったぞ!
「ローくん、ベッドはみ出ちゃう?」
「……ギリギリだな」