第1章 初恋
人の過去に涙を流すリアは美しかった。
普段はこんなこと絶対に思わないが。
当時も同年代と彼女に対しての気持ちや雰囲気が違いを感じていた。
まるで浮き足立つような。そんな感覚。
それがどうだ。
大人になった彼女はより一層、美しくなった。
小っ恥ずかしい感情を抱く自分に戸惑いを覚える。
しかし、昔馴染みに出会えた喜びは分かるが、だからといって数時間前に会った十数年ぶりの男を家に招き、よもや泊まらせるとは。なんという危機感の無さ。
その危うさは眉間にシワが寄るところではあるがそれにつけ込んでいるような自分もまた事実である。
…どうしたものか。
「わ!こ、困るから上を隠して…!」
風呂上がりに下着とズボンだけ履き、頭を拭きながら戻るとすぐに言われた。
「着替えが無ェんだから仕方ないだろ」
「そう、、だけど、」
そう言いながら目を合わせようとせずに着替えを抱えて今度はリアが風呂場へ向かった。
あの反応。
まさかとは思うが……。
し、心臓に悪い…!
確かに元々泊まる予定も無かったのをわたしが無理やり引き止めてしまった訳だけども!
まさか上半身裸で来るとは思わなかった…!
しかし思い返してみれば、新聞に載っている時も上裸にパーカーを着ているような時もあった気がする…。
い、刺青、凄かったなあ……痛くないんだろうか。
先程見たものをなんとか頭から消そうとワシャワシャと頭を洗う。
ショートヘアになってからはこんな雑な洗い方をしても絡まりまくったり、泡が飛び散ったりすることもほとんど無い。
全くもって上品さのない洗い方である。
洗い流してリンスを纏わせ、その間に体を洗う。
体の次は洗顔ソープを泡立たせる。
最後に顔と頭、そして体に流れるようにシャワーでかけ流す。
軽く髪を絞るようにして水分をとってから湯船に浸かる。
わたしでも足を曲げないと入れないこの湯船。
ローくんにはかなり狭かっただろうな。
あの頃は同じ目線だったのに。