第5章 潜水艦と日常
「ローくんが『気のせいだろ』って」
「……それ信じたわけ?」
「うん。わたしも気のせいで済む?って思ったけど避けてる相手と一緒に寝ようなんて思わないだろうし、ましてやその、だ、抱きしめられてる状態だったから……」
「な、るほど、、、」
思い返しながら言うと、あの状況を改めて人に話すとなると恥ずかしいことが分かった。
ペンギンくんも少し困ったような、気まずそうな返事をした。
「ま、まあ、何にせよ、何かわたしがしでかしちゃって怒らせちゃった!とかじゃなくて良かったよ〜」
「んぁ、あーそうだな!はは!」
「ん?なんか楽しそうじゃん。どした」
ペンギンくんと話しながら扉を開けると声が聞こえていたのか、操舵室の中にいたシャチくんがわたし達の方を振り向いた。
「なんでも〜。様子は変わりなく?」
「おー。ここら辺は海獣共も寝てるみたいで静かなもんだよ」
映像電伝虫が数匹付いているようで、潜水艇の外の映像が映し出されていた。
しかしそれでも完璧では無いから、艦内の見回りもしつつ(万が一、敵が入り込んでないかのチェックと無駄な電気を使ってないかとか)、窓から外を見て死角のチェックもするらしい。
そして絶対に1人は操舵室に残り、艦の航路を安定させる。
わたしが今の今まで安全に艦で過ごせていたのはこういう仕事をしてくれていたクルーのみんなのおかげだ。
「まあ、そう気負わずに。何か問題があるなんてのは滅多にあるもんじゃねーから」
「それにリアはまだ艦の操縦も教えてないから当分は不寝番の補佐だ」
2人がそう言ってわたしの肩をポン、と叩いて勇気づけてくれた。
頼りになる先輩たちだ。
「ほんじゃあ、今度はここでモニターの監視な」
「アイアイ!」
ずっとモニターを見ていると目が疲れてきた。注視していると瞬きの回数が減っている気がして時折モニターから目を離し疎かになっていた瞬きをする。
「目ェ疲れてきた?」
「うん……でも海中が見れるのはちょっと楽しいかも」
「ははっ、そう思えてるならまだ大丈夫だな」
右にペンギンくん、左にシャチくん、真ん中にわたしが座ってモニターを見ている。補佐のわたしが真ん中にいるのは見逃しとかがあるかもしれない万が一に備えたためだ。