第5章 潜水艦と日常
「あ、そうだ。リア、明日おれらと不寝番しねェ?」
「ふねばん……不寝番!する!」
「そんな食い気味に不寝番したがるのリアくらいじゃね」
ハートの海賊団に乗船してからというもの、未だに船番も不寝番もしたことがない。それをさせてもらえるというのはやっとわたしも一員になった感があって嬉しい。
「今回はまあメインの不寝番の補佐って感じで。どんな風にするか教えるから。不寝番までにしっかり寝とけよ」
「わかった!寝るのは得意だよ!」
「そりゃ頼もしいな」
ペンギンくんたちは笑ってくれた。
「あ、忘れた」
「ん?」
不寝番当日、わたしはシャチくんが待っている操舵室へペンギンくんと向かっている道中で忘れ物に気付いた。
とても今更なものだけど。
「なんか忘れ物?とってくる?」
「いや……忘れ物ではあるんだけど…あるの、多分船長室……」
「キャプテンの部屋??なんで?」
「医学の本、借りてたやつ……」
そう、忘れ物は借りていた医学の本。元の持ち主の手元に戻ったものを忘れ物というのは些かおかしな話な気もするけれど、まだ返す予定ではなかったのだから忘れ物である。
「そういえば昨日、本のことでも聞きたいことがあるからって言ってたな」
「うん、それで一緒に本を持って部屋に行ったんだけど……食堂に戻る時にトレーだけ持って本忘れてきちゃった……今の今まで忘れてるって……読むことが習慣になってない証拠だなあ〜」
「まあ、あとで見回りの時にでも取りに行けばいいよ。キャプテンなら起きてるだろうし」
昨日少しでも寝たんなら今日は起きてるよ、とペンギンくん。いやいや、昨日少し寝ただけでまた夜更かししていたら問題はかいけつしてないじゃない、と言いたいところだけどそれだけペンギンくん達にとってローくんが寝ていないことは普通になっているんだろう。
「それで?聞きたいことは聞けたわけ?本のことも、避けられてるかもってやつも」
「ん〜本の方は聞けてないけど、避けられてるかもってのはわたしの気のせいだったみたい」
「ほお?」
ペンギンくんは何故か意外そうに首を傾げた。