第5章 潜水艦と日常
「いつまでもここにある訳にはいかないから…」
「なんでだ」
「なんでって…えっと……わたしもやりたいことあるし、それに皆に怪しまれちゃう、よ?」
「何を」
何を、って聞かれると困るけど……。
ローくんは気にならないのかもしれない。わたしも特に気にしていなかったけれど、多少意識したりもしたけれど、ハクガンくん達の反応でなんとなく分かった。いい歳した男女がこうやって同じ部屋で、同じベッドで過ごすのは普通ではないということ。男女の友情というのはもちろんあるのであろう。だけどそれは本人たちが友情だと思っているとしても『男女の仲』でないとしても、周りからもただの友情と思われるとは限らない。
そしてわたしは少しローくんを『大人の男性』として意識してしまっている。ただの昔馴染みの男の子、ではなくなってきている。変わらない根本ではあるけれどその先になってしまっているのだ。
だから『怪しまれてしまう』という考えが出てくる。
ローくんはこうやって異性と過ごすことが多すぎてその辺が麻痺してしまっているのかもしれない。
わたしがしっかり線引きしなくては。
とはいえ、「何を」と聞かれてしまうと言葉に詰まる。
う〜〜〜〜〜〜〜ん……。
「それを聞くのは野暮というやつでは……?」
「フッ、野暮」
必死に頭を回して遠回しに言ってみたら笑われた。野暮だよ、ローくん。
「と、とにかく、わたしは、出ます」
うぎぎ、と身を捩ると思いのほか簡単に離してくれたおかげでわたしはベッドから転げ落ちた。「ふぎゃ!」
「……離すなら離すと言っていただけると……」
「ふ、くっ、悪ィ」
笑っている。とても堪えようとしてくれているけれど笑っている。その顔が可愛すぎて怒る気にもならない。
ローくんが食べたあとのトレーを持ってそれを支えつつ念力で扉を開けると「それは便利だな」とベッドに上体を起こしたローくんが言う。「でしょ?」と答えて部屋を出て、同じように念力で扉を閉めた。
ローくんは、というか大体の男の人が『可愛い』と言われるのは好きじゃないようだけど、でもやっぱりローくんって可愛い所あるんだよねえ。わたしよりしっかりしていて頼もしくてかっこいいのだけれど、その分時々思いっきり笑う所とか、あんな風に笑いを堪えてる時とか。