第1章 初恋
これで一通り、わたしのことは、わたしの一族は説明できただろうか。
自分勝手だけど、話したことで少し気持ちが軽くなった気がする。
「生まれた時から、か?」
「うん」
「じゃあフレバンスにいた頃も?」
「うん。黙っててごめんなさい」
いや…、と思案しているような様子でローくんは顎に手をやった。
「見間違い…記憶違いじゃなかったら、おれは1度あんたが能力を使ってるところを見てる」
「えっ」
あの頃から両親に毎日何度も何度も嫌になるほど能力を使わないように言い聞かせられてたはずだけど……
「木に登って下りれなくなった子猫を助けてたろ」
そんなこと…あった、、、なああっ!使った!確かに…!
「猫が飛んで下りてきたと言うよりは何かに引っ張られるような、支えられるような…不自然だったっていう違和感を覚えたことがあった」
フ、と思い出しているのか、ローくんが優しく笑った。
その顔は新聞では見ることが無かった表情で、心臓の辺りがギュッと掴まれたような気がした。
「ま、まぁ、それ以降見られてないってことだし、過ぎたことだから大丈夫…」
口をモゴモゴさせつつ、ローくんを盗み見するとお店でそうだったように目が合った。
「……ねぇ、ローくん」
「あ?」
「…ローくんのことも、聞いていい?」
フレバンスの消滅後に届いた最後の手紙。
皆殺しにされたというフレバンスで生き残ったローくん。
本人にとっては悲惨すぎる過去の話。
わたしが知りたいと思っているこの感情ですら、自分の過去を、事情を話したいと考えたように自分勝手なわがままだ。
けど、知りたい。
これで会えるのは最後かもしれないのだ。
出来る話はどんな事でもしたい。
懐かしい夢を見たその日に会えるなんて奇跡や運命以外になんて言えばいいのか、わたしの乏しい語彙力では分からない。
ローくんはわたしから目を逸らす。
遠くを見るように、記憶を辿るように。
自分が経験したことを本を読むように淡々と話しだしてくれた。