第5章 潜水艦と日常
「…どうした?」
「ぅん?!なんでもないよ!ちょっと走ってきちゃったから熱くて!」
あはは〜!と誤魔化し笑いをしながら本当に熱くてシャツの襟を掴んでパタパタと風を取り込む……様子を無表情でジッと見られて余計熱くなる。何、この堂々巡り…!!
「ご、ご飯、食べ終わったなら寝ようね!」
「あ?本気で言ってんのか?」
「本気だよ。ほら、ベッドに寝転んだら眠くなるから」
汗をかいたものの当初の目的に変わりはない。
ちょっと遠くから子守唄でも歌ったら寝てくれるかな……。
わたしが言った通りにベッドに寝転ぶローくんから少し離れる。
「おい」
「ん?」
「なんで離れる」
「ここから子守唄歌ってあげるから」
「……言ったよな、おれ」
「??」
何故か睨んでくる。凄んでくる……言った、とは?
「リアが一緒に寝るなら考えてやるって」
「……ハッ!」
言ってたのは覚えてる。けれどそれだと今の汗をかいたわたしが横に並んで寝転ぶのは気が引けるから遠くから子守唄で寝てもらおうと思っていたのだけれど…それだと一緒に寝ることにはならないから『寝ることを考えすらしない』?
それは良くない。良くないけど…!
「あ、あのね、さっきまでは一緒に寝るの全然良かったんだけど、今は都合が悪くなったというか…」
「じゃあ寝ない」
「でエッ…え、えっとでもローくん、わたしがいいよって言った後、やっぱいいって言ったじゃない」
「…………それとこれとは別だ」
……別か?別じゃ…なくない??
「お前が寝ないなら俺も寝ない。皿持って行ってくる。じゃあな」
「あのね!!!」
トレーを持って部屋を出ようとするローくんを止めた。
何もしてないのに手汗が酷い。
「……その…都合が悪くなった、ていうのは、わたしが汗かいちゃって…この状態で隣に寝転ぶのは、はず、恥ずかしい、な、と……思、」
ギュウ、
言い切る前に目の前が暗くなり、体が圧迫された。
そして、
スゥ───────
「?!」
微かに爪先立ちになるように抱き上げられ、耳元で息を吸う音が聞こえた。