第5章 潜水艦と日常
「それ食べたら一度ちゃんと寝なさい」
「指図すr」
「分かった?」
返事をしなさい、と無言の圧で伝えようと近くにあったローくんの太ももに手を置いて力を込めると、ローくんの体がビクリと動いた。
お?無言の圧が伝わったかな?
「……リアが一緒に寝るなら考えてやる」
食べる手を止め、意地悪そうに口角をニィ、と上げた。
「ん?いいよ?」
それで寝てくれるのであれば簡単な事だ。ただ一応そうなれば一時戻れないだろうから食堂に戻って誰かにわたしはローくんの部屋にいるから、っていうのを伝えよう。あと緊急じゃなければローくんを訪ねないようにしてもらおう。寝る気になっているときにたくさん寝てもらわなくては。
しかしローくんは「やっぱいい」とぶっきらぼうに言った。
何が気に食わないのか、眉間に皺を寄せて。
「…ちゃんと寝る?」
「ああ」
「ほんとかなあ。寝るまでそばに居ることくらいするよ?」
「……おれをなんだと思ってるんだ。1人で寝れる」
もしかしたらローくんは幼い頃の経験で、寝ることに何かトラウマとか苦手意識があるのかもしれない。
かと言って睡眠を蔑ろにする訳にはいかない。多分それはローくん自身だって分かってる。
「ちょっと待っててね。戻ってくるから」
「は?」
まだ食事中のローくんを部屋にひとり置いて、食堂へと戻る。
「ペンギンくん!」
「お、リア。キャプテンどう?食べた?」
「うん、今食べてるよ。それでね、食器はまだ返せそうにないからあとでわたしが洗うね」
「別にそれはいいけど、どうした?」
「わたし今からローくん寝かしつけるから、ローくんが寝れるように緊急以外は部屋に誰も来ないようにしたくて」
そこまで言うと同じく食堂にいたハクガンくんが仮面の下からスープを吐き出した。
「えっ、大丈夫?」
「ェ゛っホ、ゲホッ、だ、だいじょうぶ……」
背中を摩りつつ、布巾で周りを拭くと徐々に回復してきたハクガンくんが「自分で拭く」とわたしの手から布巾をとった。
「ね、寝かしつけるって言った?」
「うん」
「それ、キャプテン寝れる?リア、大丈夫?」
ハクガンくんが何が言いたいか分からず首を傾げる。