第5章 潜水艦と日常
近くの窓から外を見ると、艦に近いところで砲弾が4等分にされ、海に落ちるところだった。
ローくんだろうか。
徐々に敵船が近づいてくる。
恐らく乗り込んでくるつもりだ。
ローくんは瞬間移動のようにある程度距離が離れていても敵船に乗り込むことが出来るけど、敵船との距離は近い方が戦闘が終わってから相手の船から物を運ぶには便利だと言っていた。
しかし、それでも敵船が大きいと万が一勝てない相手だった場合、撤退が難しくなるから見分ける必要があるとも。
それぞれが配置につき、必要な前情報を収集し、それを全体に伝え、最終判断をローくんがする。
ペンギンくんたちは「キャプテンが敗ける相手なんてそういないけどな!」と言う。わたしもそう思うけど、海は広い。事実、ローくんより賞金額が大きい海賊もいるのだから『絶対』ではない。
皆が戦う間、わたしは艦内で身を潜めながら怪我人が駆け込んでくるまで出来ることは無い。
「リア、クリオネたちどんな感じ?」
「傷は深くなかったよ。今は落ち着いてるし、大丈夫だと思う」
戦闘が終わり、艦がどれくらい傷ついたか点検しに行くクルーもいれば、怪我をして手当が必要なクルーもいる。
戦闘中に撤退しないといけないほどの怪我人はおらず、戦闘後に手当を少しする程度で済んだことは幸いだ。
「あ、ローくん」
「なんだ?」
通りかかった戦闘終わりのローくんに声をかける。
「クリオネくんたちの手当したんだけど、あとでローくんも見といてくれる?ちゃんとわたしの処置で大丈夫か確認して欲しいの」
「分かった」
ローくんはそのまま自室へ向かうのか、早々に会話を切り上げて離れていった。
……確かに今は報告しかなかったけど───今だけじゃなく、最近ローくんが素っ気ないというか、必要以上にわたしに近寄らないというか……。
この艦に乗ってからというもの、何かと近い距離でお話してた気がするけれど──その距離の近さにわたしがちょっとドギマギすることがある程に。
今は人一人分程の空間をあけて、って感じだ。
多分、わたしがクルーのほとんどに膝枕をしたあの日から、かな?
気の所為かもしれないけど……。