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【OP】GIFT

第5章 潜水艦と日常




「敵船発見!」
「砲撃来ます!」
「衝撃に備えろ!」
「回避の揺れに気をつけろ!」


クルーがバタバタと忙しなく動き回り、キャプテンであるローくんは指示を飛ばし、自分も前線へと出る。


海上では他の海賊船に見つかったり、海軍に出くわしたりもする。
海獣には海上海中関係なく遭遇することだってある。


「リア!リアは艦内にいろよ!」


表へ出ようとすれ違ったペンギンくんが言う。
わたしも行くよ、と言いたいところだけれど、念力があるだけでろくに戦う術をいまだに知らないわたしはかえって足でまといでしかない。最悪、わたしのせいで誰かが怪我をすることだって有り得る。



「分かった!怪我したら戻ってきてね!手当出来るように準備しとく!」
「助かる!そっちは任せたぞ!」


手を振って外に出るペンギンくんを見送ってすぐに医務室へ駆け込み、わたしでも扱える簡単な治療道具を甲板から最も近いところへと移動させる。

医務室は本当に重傷の人を優先できるように空けておかなければならない。

縫合はさすがに出来ないけれど、多少の傷であれば処置の方法をローくんをはじめ、皆に教えてもらったし、何人かには試しに、と手当をさせてもらったからある程度は出来るようになった。



けれどそれだけだ。
わたしにはまだまだできることが少ない。皆は「よくやってる」「最近艦に乗ったばかりなのに上出来」と褒めてくれるけれど、それでは足りない。
もっと頼られるように、頼もしいと思ってもらえる存在になりたい。
わたしは『戦闘力』にもなりたいのだ。

人を傷つけたい訳じゃない。出来れば傷つけたくはない。自分が怪我をするのも怖いけれど、それ以上にハートの海賊団の誰かが怪我をするのが嫌だ。だから、だからわたしは皆が怪我をしないように人を傷つける必要があるんだ。
一方向の勝手な言い分なのは分かっている。


それでも​───────



「わっ、」



相手の艦による砲撃のせいで、高波がポーラータング号を襲う。
それに伴う揺れにバランスを崩し、近くの壁に手をついて、転ぶのを回避した。


転んでなんかいられない。





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