第4章 日向ぼっこ
「おれが取りに行く。どこだ?」
「借りた上にそんな取りに行かせるなんて……すぐそこだし」
「すぐそこならいいじゃねェか。どこだ?」
わたしの脇下に腕を差し込むように片手で抱えて、地面から足を浮かすようにしてくれるのは有難いんだけれど……その腕が脇下から胸下にまで回り、わたしのなけなしの胸がローくんの腕にのっている。
多分、なけなしの胸だからローくんも気にならないとは思うんだけれど、わたしが意識してしまう。
しかしローくんは至って真面目に足が痺れていることに気を使ってくれているだけだから指摘するのは憚られる。
「わたしのロッカーに……うん、そこ」
ロッカーを指さしながら言うと、すぐにローくんはわたしのロッカーを開けた。
と、同時に思い出した。
洗ったパーカーとトレーナーを畳んだその横にベビードールを畳んでおいたことを。
「……!」
「?どうした?」
わたしが勢いよくロッカーを見たことを不思議に思ったローくんの手には既に自身の服が2つともあった。
み、見てない?
他の服に押しつぶされたりしてしわくちゃにならないように綺麗に畳んだベビードールはその見た目が分からないにしても他の服ともハンカチとも素材が違うから不思議に思われなければ大丈夫……?
ベビードールを買って帰ってきたその日に、ベッドにクシャッと置いてしまったあの時も何も言われなかったし……
「な、なんでもない……」
「……?」
ローくんは訝しげにしながらもわたしをベッドに下ろし、扉の方へ歩いていく。
「寝るでもなんでも好きにしていいが、足が痺れてる間は出歩くなよ」
ローくんは指をさして念を押すとそのまま部屋を出ていった。
「キャプテン、キャプテン」
「なんだ?」
リアを部屋に送り届けてきたのか、食堂に戻ってきたキャプテンを呼び止める。
おれはペンギンと一緒にイッカクから聞いた話をキャプテンにしておこうと思った。
いくら昔なじみとはいえ、リアに対する接し方が明らかに今までの女に対するそれとは違うことはクルー全員が気付いている。
ならばあの情報、男としては夜のオカズにするのに充分足りうるはずだ。
キャプテンが1人で抜くことがあるのかなんて話はしないにしても。