第4章 日向ぼっこ
「…眉間のシワ、戻らなくなっちゃうよ」
ぐにぐにと指で眉間のシワを馴染ませるように押し撫でる。
「みんなが喜んでくれるのが嬉しくてつい。みんなそれぞれ役割があるのにわたしだけ何も出来てない気がして…」
「別にリアに何かを求めてるわけじゃねェよ」
「うん、分かってる。ローくんは『そのうち』って言っくれたし、みんなも『すぐに出来なくても大丈夫』って言ってくれてるし……だからこれはわたしの自己満足、かな」
前にローくんの頭を撫でたら『やめろ』って言われたけど、構わずまた撫でてみる。今日は帽子の上から……すると、今日は撫でられてもいい気分なのか、帽子を顔の上にのせ、日差し避けにするから直で撫でれるようになった。
「野郎ばっかなんだからそう簡単に肌をさらすな。今後はベポとおれ以外には膝枕なんてするな」
帽子の下からくぐもった声が聞こえる。
「え?ベポくんはまだしもローくんにもしていいの?イッカクちゃんは?」
「イッカクはいい。男はおれとベポだけだ」
「はーい」
快晴の中、サァァと吹き流れる潮風が肌を撫でていくのが気持ちいい。
後ろからはベポくんの暖かさと膝にはローくんの頭が丁度いい重さでのっていて人肌に囲まれていることでだんだんとわたしまで眠くなっていく。
けれどローくんを撫でれるなんて次またいつあるか分からない機会。手離したくない、と落ちかける意識を頑張って繋ぎとめつつ撫でる手を止めない。
けど……やっぱり……
眠い……───────
暫くして、頭を撫でていたリアの手が止まった。
心地良かったのに何故、と思い陽射し避けにしていた帽子をずらして上を仰ぎ見ると帽子がなくても眩しくないほどにリアの顔が被さるように頭上にあった。
……寝てるな
その寝顔を下から見ていると、ゆっくりと体が腰を軸にしながら前に倒れてくる。
起こして、「寝るなら部屋で寝ろ」と言いたいところだがその前に。
出来るだけ小さく、衣擦れ音をたてないようにしながら顔をリアの腹側に向け、腹に鼻をつける。
スゥ───────
思いっきり吸うと肺にリアの匂いが鼻腔から肺へと充満する。
落ち着く匂いだが、その奥に己をずくりと重くさせる甘美の香りがする。