第1章 初恋
「…迷惑、かもしれないんだけど、わたしのこと、話してもいい?」
膝の上に握った手のひらに汗が滲んだ気がした。
「ああ」
出来るだけ、簡略化して話したいけど、出来るだろうか?
「"白の一族"って知ってる?」
「…知らねェな」
あの頃、多分両親もローくん一家には話していないはず。話していないにもかかわらず、ローくんのご両親はわたしたち家族に病院の一室を貸してくれていた。
すぐに引っ越すかもしれない事情の詳細を言ってないのに。
「わたしの一族は"白の一族"って呼ばれていてね。神様から特殊なギフトを授かった一族とされてるの」
「ギフト?」
「悪魔の実を食べてなくても、まるで悪魔の実のような能力を持ってるの」
その言葉にローくんが目を鋭くさせた。
「一族と言っても、血縁者だけで婚姻を結んでいくには限りがあるから、無関係の人と結婚して子供を産んで、っていうのもあるんだけど、ギフトを与えられた子は体毛が白いの。特に髪の毛」
わたしの髪を掬って見せる。
「だから"白の一族"か?」
「うん。けれどギフト持ちの人を『神からギフトを授かった者』じゃなくて、『神そのもの』って捉える人もいて。"神の一族"と言う人もいる」
そして……
「このギフトを、能力を研究しようと政府や海兵が生け捕りにしようとしているの」
きっと突拍子もない話をされて、ローくんは困惑するだろう。
目を鋭くさせたまま、どんどん眉間にシワが寄ってきている。
「捕まえて、政府や海兵に渡せば懸賞金も出るから、誰がわたし達を捕らえようとするかわからない」
だから両親は。
わたし達一族はバラバラに散らばり、身を隠しながら生きている。生きているはず。今まで1度も両親以外の一族と会ったことはない。
「フレバンスを出た後、手紙のやり取りが途絶えてしまった後…海賊に捕らえられそうになったのを抵抗した両親はわたしの前で殺された」
脳裏に忘れたくても忘れれない、忘れてはいけないあの時の光景が浮かび、思わず目を閉じた。
「表立って公表されてる情報じゃないから、引き渡せば懸賞金が出るということを知ってる人も、"白の一族"の話も誰もが知っているわけじゃない。それでも、わたしを逃がしてくれた両親の為にもわたしは生き延びる為に住む場所を転々としてるの」