第3章 上陸
多分わたしが念力を使うことに集中していたせいでノックに気づかず、不思議に思ったローくんが扉を開けてみた、ということなんだろう。
「えっと……何か用だったりする?」
「特にないが……イッカクに聞いたら部屋にいるって言ってたから来てみただけだ。……調子は良さそうだな」
「うん、お世話かけました」
わたしの様子を気にかけてくれていたんだろうな。それで一緒に行動していたはずのイッカクちゃんがいるのにわたしの姿を見なかったから聞いたのかな。なんていいお医者さんなんだ……。
「それで?その天井に叩きつけたマットレスは?」
「……ベッドに設置しようとしてました……念力のコントロール練習も兼ねて」
「驚いたりしたら力加減間違えるってことか?」
「そうだね。それで今叩きつけちゃった」
思い出したら割と面白い動きしたなあ。
ふふ、と笑うとローくんも同じように思い出したようで「ああなるんだな」と笑った。
「わざわざ力使わなくても誰かに言えばいいだろ」
「いやいや、自分で出来ることだし……」
言いながら、ローくんはマットレスを抱えてベッドに載せてくれた。
わたしと違って軽々と。う〜ん、やっぱり男の子のほうが力強いのかな。
特に用があったわけじゃないローくんは引き続きベッドメイキングを手伝ってくれるようで、シーツや枕などをわたしに催促した。
シーツの余剰分をマットレスの下に入れるのを手伝ってくれるし、布団カバーをつけるのも手伝ってくれる。
と、ふいに考えていたことを思い出した。
「そういえば、なんだけど」
「?」
「医学の本のオススメを教えてもらってもいい?」
「別に構わねェが…何か気になることでもあるのか?」
「ううん。わたしも何か出来ること増やしたいってだけ。知らないより知ってる方がいいじゃない?自分もそうだけど誰かが怪我した時に慌てなくていいように」
「…そうだな。後で何冊か見繕ってくる」
「とりあえず1冊でお願い!手間かもしれないけど万が一失くしたり汚したりしたら嫌だから1冊ずつ大事に取り扱わせて頂きます!」
「そんな大層なものは……いや、わかった」
会話をしながらでも2人でするとあっという間にベッドメイキングが終わった。