第3章 上陸
「急いでなにかしようとしなくてもこれからアタシらと生活すんだからそのうち肉も絞れるでしょ」
大丈夫大丈夫!と快活に笑って手を離す、もといお腹の肉を離してくれた。
「この黄色可愛い……」
「お?もう黄色に目がいってんの?」
「もう?」
何となく黄色に目がいき、自分のサイズがあるか確認していると近くにいたイッカクちゃんが言う。
「アタシたちも1着は黄色持ってるよ」
「たち、ってことは男の子たちも?」
「男の子たち」とイッカクちゃんは笑った。
「そ。男共も黄色のパンツ買っててさ。似たりよったりのデザインだったりするからそれぞれ名前やらマークやら書いてるみたいよ。まあ艦があんだけ黄色だからね。艦愛なのか海賊団愛なのかキャプテン愛になるのかわかんないけど」
「……それってローくんも持ってるのかな……?」
「履いてるか分かんないけど、シャチが『キャプテンのはこれな!』って名前書いて渡してたはずだから持ってはいるんじゃない?」
そう聞いて思わず想像してしまった。
シャチくんがローくんに渡したところ、そしてそれをローくんが履いたところ。さすがに下着姿のローくんなんて見たことなくて、あと勝手に下着姿を想像するのは申し訳なくてハッキリとは想像できなかったけど、もうそのエピソードが……
「可愛い」
「あはははっ!ってことで黄色、オススメよ」
ほら、とわたしが持っている下着で既にサイズを把握していたのか、わたしが探していたサイズの黄色の下着を渡してくれた。
3着ほど新しく下着を買い足すことにして欲しいデザインを3着にしぼり、レジへ行こうとするとイッカクちゃんが「来て来て」と手招きをする。
「なぁに?」
「アタシさ、女クルーが増えたらやりたかったことがあって」
「うん」
じゃーん、とイッカクちゃんが商品を手に取り、わたしに見せる。
彼女の手にあったのはランジェリー───それも大胆でセクシーなベビードールだった。
「?!?!」
「あはは、赤くなりすぎでしょ」
女性物のそれは女であるわたしでさえ赤面してしまうほどだった。馴染みが無さすぎる。