第1章 初恋
裏口から追い出され、仕方なく表へ出ると、壁に体を預けていたローくんがわたしに気付いた。
「…30分くらい、と言ってなかったか?」
「えっと…女将さんが、せっかくなんだからって…」
どうしよう、緊張してきた。
壁から体を離したローくんがわたしを見下ろす。
それを見上げるわたし…
ローくん、すごく背が高くなったなぁ…。
私より30cmは高そう。
「…縮んだか?」
わたしと同じようなことを考えていたらしい。
「…ローくんが身長伸びすぎたんでしょう?」
お互いに少し笑う。
どんな風に喋ってたっけな。
「その、立ち話も何だし、わたしの家に寄って行かない?」
わたしの申し出にしばらく沈黙が流れる。
「良いのか?」
「え?うん。だってここお店の前だし…他のお店も閉まってるだろうし…」
そうだな、と相槌を打つのを確認して、わたしの家へ案内すべく、足を向けた。
道中はお互い久しぶりすぎて距離感がなかなか掴めずにたどたどしくお喋りをした。
この島に来てどれくらいか、とか
ローくんたちが最近行った島の話とか。
お店から家までがそんなに離れていないから時間はあっという間だった。
鍵を開けてローくんに「どうぞ」と中へ入るよう促す。
「1階なのか?」
「うん。仕事の終わりが遅いから、2階だと階段登る音が迷惑かなって」
わたしの部屋は二階建てアパートの1階角部屋。
このアパートは大将達の持ち物件で、賃貸になっている。
少し高台になっているところに建っていて、1階でも割と眺めがいい。
ローくんが玄関に入ったところで、立ち止まって、奥をじっと見ていることに気付き、その視線を追った。
「っ!、あ、っと目を瞑っといて!!!」
ローくんの横をすり抜け、先程まで視線の先にあったものを急いで取り込み棚ではなく、荷物を入れているバッグへ突っ込んだ。
仕事前に干した洗濯物…まだ乾ききっていなかった下着を干しっぱなしだったのだ…。
み、見られたっ!
「…見てないよね」
まだ目を瞑ってくれているローくんに確認する。
「見てない」
そう言うローくんの口角が片方上がっていた。
それは幼い頃にも覚えがある笑い方。
少し企みがある時や悪戯した時の笑い方だ。
見たじゃん!!!