第1章 初恋
ただ、盗み見していると、割と目が合う気がする。
気の所為かもしれないけど、自分がそんな鋭さを持ち合わせているとは思えないけど視線を感じる気がする。
これまでの生き方のおかげで多少は人からの視線に敏感な方だとは思ってるけど…それでも第六感がよく利く、という程でもない。
だから、本当に『なんとなく』
しばらくして、ハートの海賊団の面々も酔いつぶれる人が出始める。
1人に1人付くようにして店を出て行く。介抱に残る人と戻ってくる人も居るけれど、そろそろお開きなのか、『持ち帰り用』が出来ているか聞かれ、大将と女将さんの配慮で出来るだけ出来たてのものを詰め込んだ容器を山盛り持って数人がお店を出て行った。
その間、ローくんは静かにお酒を飲み続けていた。
決して量は多くなくて、その姿はまるで『大人の男』のようだ。
そろそろ閉店時間、という所で「ごちそ〜さんでした!」とシャチ帽子の男性とペンギン帽子の男性が白いクマさんにもつれるように抱えられながらお店を出て行った。
それを後ろから見守るようにローくんも席を立ち、ドアへ向かう。
最後のお客さんということもあり、看板と鍵閉めのためにもお見送りをしようと近付くと、お店を出たところでローくんが振り向いた。
「あとどれ位で帰るんだ?」
「…え?」
「ここで待つ」
「え、や、軽く片付けてからだから30分くらいあるよ…?」
もしかして…わたしのこと、覚えてくれてた…?
オープン中も女将さんかわたしがお皿を洗ったり片付けをちょこちょこするから、閉店後の片付けはそんなに時間がかからない。開店前の準備の時にも時間はあるし……それでもこんな何も無い外で30分も待たせる訳には……
「待つ」
そう言ってローくんは長い刀を肩にもたれさせながら、お店の壁に体を預ける。
「わ、分かった…!」
わたしは急いで立て看板とOPENの壁掛けを回収して店内に入り、片付けを始めた。
その様子が明らかに変だったのか、女将さんに「どうしたの?」と聞かれた為、実は海賊団の船長は昔馴染みであることと今外で待っていることを伝えると、すっかりローくん達は『良い人』認識になったようで、
「今日はもう良いから、上がりなさい」とわたしの荷物を持たせてグイグイと裏口から追い出された。