第3章 上陸
路地裏から出ていくイッカクとリアを見送り、先程までリアが座っていた木箱に今度は自分が座る。
「っハアーーーーー…!」
大きく息を吐き、気持ちを落ち着かせる。
正直ずっと気が気じゃなかった。
頬を紅潮させ、瞳を潤ませたリアと目が合った時からずっと。
触れた時におれの手に顔を擦り寄せたり、触れた時に聞こえた甘い吐息が漏れるような声、手を貸した時も言葉が抜けてるせいで別のものを想像して勃ちかけた。
どうしても邪な想像が頭を駆け巡り、出来るだけ触らないようにしていた。
それでもあの状態で1人にするのは危険だと判断して離れなかったというのに人のことを気にしてどこかへ行ってこいと言いやがって……。
このままでは街を彷徨くには落ち着かない。
今度はおれが治まるまで動けねーじゃねェか。
「あの、イッカクちゃん?」
「あ〜!これも可愛い!うん、似合うよリア!!」
「え、あ、ありがとう……じゃなくて他にもこんな」
「動きやすいのはズボンだけどやっぱスカートも履きなって!せっかくツナギじゃないんだから!」
「……」
今わたしは合流したイッカクちゃんと洋服屋さんに来ている。
……そしてイッカクちゃんはリストにたくさん書いた以上に「本当に必要?」っていうくらいの量の服をわたしに見繕おうとしている。
ちなみに先程からあまり話が通じていない。
イッカクちゃんは合流する前に持ってきていた替えの服に着替えたようで、わたしと出歩くためにツナギ姿ではなく、私服で一緒にいてくれている。
ツナギ姿だとハートの海賊団だというのが丸わかりで、わたしと歩くには悪目立ちしそうだから、ということだったんだけど……今まさにこれはこれで悪目立ちなのでは…?
「イッカクちゃん」
「ん?!なに?!」
何度目かの呼び声にようやく返事をしてもらえた。
「あの、さすがにこんなに必要ないと思うんだけど……それぞれの季節に合う服もあるし、組み合わせ次第でも……」
「でもこれもこれも可愛いしリアに似合うと思うんだけど」
さも正論かのように堂々とイッカクちゃんは言う。