第3章 上陸
わたしのほうが先に食べ始めたのにシャチくんのほうが「ごちそーさん!」と食べ終わった。早い……!
ゆっくり食べな〜、と言ってくれるけどあまり待たせたくはない。
あと本当にこの肉まん、体がぽかぽかする。なんなら暑いくらいな気がしてくる。わたし、汗かいてない?
「…ん?リア、めっちゃ顔赤くなってきてない?」
「モゴ……ん、やっぱり?」
まだ口の中に残っているから手で口元を抑えながら返事をした。どうやらわたしの勘違いではなく、人から見てわかるほどに身体が温まってきているようだ。
先程からなんだか熱さとはまた別にジンジンするような感覚もある。
暖まった反動とでもいうように鼻水が垂れそうだし、涙まで滲み始めた。
「なんか……ェ、あ、キャプテン」
シャチくんが何かを言おうとした途中で後方にローくんを見つけたらしく、片手を上げて手招きをする。
振り返ると、人混みの中にあの特徴的なブチ柄を見つけた。
目が合ったかな?と思うと、ローくんの歩くスピードが上がってあの足の長さもあってすぐにわたし達の元に来た。
「……何があった」
「え?」
「今肉まん食べてたところで……」
バクッ
すぐに理解できなかったわたしに代わって、シャチくんがわたしが持つ肉まんを指さしながら言うと、わたしの手にある肉まんにローくんがその高身長を屈ませ、かぶりついた。
噛みちぎる際に少し口からはみ出た皮をペロリと舌なめずりするように取る様が色っぽく見えて思わずポカン、と口を開けて眺めてしまう。
「……これ、どこに売ってた?」
「そこ」
気に入ったのかな?売っているお店を指さすと、ローくんは少しため息をついた。
「?」
「シャチは何ともないんだな?」
「おー」
シャチは??
ぼーっとする頭で何かひっかかる言い方をした気がした。シャチはってことは今のわたしは『何か』起きているのだろうか?
「身体が暖まる、というのにも種類があるだろ。運動してだとか、生姜とか食べ物によってだとか」
「…うん?」
「……これは媚薬に使われる成分が入ってる」
「マジ??」
「マジだ」
シャチくんも驚いていた。
……びやく???
えっと……びやくってわたしの少ない知識だと完全には理解してないんどけどあの、え、えっちな気分になるとかならないとかいうあの媚薬??