第3章 上陸
寝具の買い物が終わり、わたしたちは艦に戻ることにした。荷物が多すぎてこのままじゃイッカクちゃんと合流出来ても買い物の続きが出来ないことは明白だった。
その道中で他のクルー達と会うこともあり、1人の時にはなかった楽しさがわたしの気分を高めていく。
「付き合ってもらってるのに申し訳ないんだけど楽しい……」
「そりゃ良かった。別に申し訳ないとか思わなくて良いんだぞ」
マットレスは横に持ちやすいよう取っ手がついているけど、それを片手で持つ力持ち加減には驚いた。シングルサイズとはいえ重たいと思うんだけど……。
しかももう片方の手には掛け布団まで持っている。わたしが持っているのは肌掛けとかシーツとか、嵩張るのと言ったら枕くらい。
何かお礼が出来ればいいんだけど……。先程「お礼に何か、」と言うと「今の状態が充分お礼になってる」と気遣われてしまった。
艦に戻り、荷物を女部屋に置いてまた艦を降りる。
「シャチくん、まだ時間ある?」
「ん?おれは別に大丈夫だけど?」
「良かった。さっきね、『食べたらすぐに温まる』って売り文句の肉まんがあったの。食べに行かない?」
「そんなのあったんか!行く行く!」
お礼、と言うと多分断られるだろうと思い、自分も食べたいという意志を前に出してみたらOKを貰えた。やったね。
賑わう街の中、先程見かけた肉まんを探しながら歩く。
店内に入らずともテイクアウトを出来るようなお店の作りで、ほかほかの肉まんの匂いが目印になった。
「ここ!」
「うまそ〜!」
肉まんはこのお店の名物のようで、種類は一つだけだった。
すかさず2つ買って、1つをシャチくんに渡す。
「え、おれ払うよ」
「あつあつのうちに食べよ〜」
「や、話聞かんかい」
あつあつのうちに、と言ったものの猫舌のわたしは充分気をつけて食べなくてはいけない。
はふはふと熱さを逃がしながら、シャチくんを無視しながら食べていると諦めてくれたのか、シャチくんも食べ始めた。
「んまっ!」
「ん、ね、あふふふ」
「ふはっ、熱がりすぎだろ」
お店の邪魔にならないように路地裏近くに避けて食べていると、お店からの熱気はなくなったのに本当に体がぽかぽかしてくる。