第7章 この世の良さ
「流石、ヒカリは言う事が違うなー」
「驕られてる身で何言ってるんだ、ナイス」
いつもの調子のナイスにいつものように溜め息をつく。だが、つくづくヒカリがここにいてこうして楽しく騒いでいられているのは奇跡だと思う。
「ヒカリ、あんまりナイスを甘やかすなよ」
「分かってますよ、今回のはお礼ですから」
「そうそう!お礼、お礼」
サンドイッチを食べながら頷くナイス。調子のいいことだ。
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「ご馳走さまでしたー」
ひとしきり騒いだ後、ヒカリを送るべく一緒にカフェを出た。
「ムラサキー酔った勢いでヒカリ襲うなよー」
「路地裏に引っ張ってあんな事やこんな事ー?ムラサキ、男だなー」
「お前らいい加減にしろ!それに酒は一滴も飲んでない!」
ナイスとバースデイのからかいをヒカリは面白そうにクスクスと笑っていた。
「それじゃあ、今度は海ですね!」
「そうだなっまたなーヒカリ」
店にいる皆に手を振って別れを告げたヒカリは歩き始めた。
「ムラサキ、ホントに気がついてないのかー?」
「らしいわね、さっき飲んでたのにお酒が混じってた…なんて」
そんな会話をしている事など知るよしもない二人は街灯や店の灯りで照らされた夜道を歩いていた。
「夜風が気持ちいいですね」
「そうだな」
火照った身体が夜風で冷やされていく。…のだが、なかなか熱さが抜けない。妙に浮かれた気持ちがある。
「ムラサキさん、大丈夫ですか?」
「…あぁ、なんかまだ熱が引かなくてな」
「騒ぎましたからねー無理もありませんよ」
横に一緒になって歩いているヒカリを見る。今日は妙に可愛く、綺麗に見える。普段も可愛く、綺麗だが。ヒカリを見ると妙に気持ちが高ぶるし、抱き締めたくなる。
「ヒカリ…」
「はい?なんです…わぁっ!?」
身体が勝手に動いてヒカリを抱き締めていた。ヒカリの匂いが余計に気持ちを高ぶらせる。そう言えば、病院でヒカリが退院したらキスが欲しいって言ってたな…。