第7章 この世の良さ
その後もハニーにスリー、様子を見にきたレシオにバースデイ等々。ヒカリを見舞いにくる人は絶えなかった。
「俺もそろそろ、帰るか…」
「もう、帰るんですか?」
「うっ…」
若干上目遣いのヒカリ(本人は普通に見上げているだけなんだろうが)にドキッとした後、視線をさ迷わせる。少し悲しそうな目で見てくるので尚更帰りずらい。
「はあ…もう少しだけな」
「ありがとうございますっ」
途端に笑顔になる。振り回されることが多くなったがそれも悪くないと思う自分がいた。
「ムラサキさんは私のどこが好きですか?」
「…誰にでも等しいと言うところ…だな、それにお人好し」
「後者はどう考えても好きなところじゃないですよね…」
「好きなところ言うより尊敬しているところって方が合ってるな」
いきなりの質問に戸惑ったが、どうにか口に出来た。ヒカリの好きなところと言えば、それは全てな訳で。
「それならヒカリは俺のどこが好きなんだ?」
「なんだかんだ言うけど結局優しいところが好きです、全部好きですけどね」
「…」
病室でこんな会話をするのは生まれて初めての体験だ。改めてそう言う事を言ったり言われたりするのは物凄く照れる。
「ムラサキさん」
「ん?」
「私が退院したら、退院祝いにキスくださいね」
「…はぁあ!?///」
思いもよらぬ発言にたじろぐ。ヒカリは若干照れてはいるもののいつもとあまり変わらない様子で笑っている。
「わ、分かった!そんなに欲しいならいくらでもしてやるっ//」
「ふふっやけになってません?ムラサキさん」
「なってない!」
それから数時間ヒカリと過ごし病室を後にした。
*********************
「退院おめでとうございます!ヒカリさん!」
「ありがとうっコネコさん」
カフェノーウェイにてヒカリ退院祝いが行われた。海に遊びに行く話は来週に決まったらしくそれも含めて皆集まった。
「無事で何よりだ」
「マスターもありがとうございます」
「今日はヒカリの驕りらしいし…マスター!サンドイッチ作ってよ!」
「全く機嫌のいいことだ」
ナイスはこれでもかと言うくらいマスターに注文する。
「いいのか?ヒカリ」
「平気ですよ、ナイスくんにはお世話になりましたし」