第7章 この世の良さ
「ふっ…あははっ冗談ですよっ昨日ムラサキさん、あのまま熟睡でしたよ」
冗談にまんまと引っかかった俺はしばらく呆然としていた。俺の目の前ではまだクスクスと肩を揺らしてヒカリが笑っていた。
「全く…冗談にも程があるだろ」
「でも、ムラサキさん、自分がやったって勘違いするなんて…したかったんですか?」
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべるヒカリ。
「ヒカリ」
「はい?…キャッ!」
少し仕返しでもしてやろうとそのまま押し倒した。突然のことにヒカリはしばらく目を丸くしたままだった。
「む、ムラサキさんっ?///」
「そう言えば…キスがまだだったな?」
《ヒカリside》
ど、どうしよう。まさか、押し倒されるとは思ってなかった。少し艶が増した声でムラサキさんは顔を近付けてきた。
「…この華奢な肩も白い艶やかな肌も綺麗な金髪も…全部、俺のだ」
ドラマか漫画で出てきそうな台詞をムラサキさんは事も無げに言ってみせた。だんだんと頬が紅潮する。
「っ///」
首に優しく触れられ、思わず息を詰める。首から肩、胸元…。
「ヒカリ」
「は、はい」
返事をした瞬間、口を塞がれた。ムラサキさんの唇によって。舌が入ってきて絡み合う。それだけで幸せな気分だった。唇が離れ、こっそりムラサキさんの顔を伺う。…真っ赤な顔をしていた。
「ムラサキさん…顔真っ赤ですけど大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫に決まってるだろっ!////」
絶対大丈夫じゃない。ムラサキさんは仕返しにさっきの行動に出たのだろう。だが、慣れない言動に恥ずかしさがあったのだろう。
「無理しなくてもいいですから」
「無理してない!!///」
真っ赤な顔されながら言われても説得力に欠けますよ、ムラサキさん。そのうち耐えきれなくなったのか乙女泣きし始めた。ちょっと可愛い。
「仕返しのつもりが…」
「あはは」
ムラサキさんは結構、奥手だった。それでも約束を守ってくれるところ、やっぱり優しいなあと思う。
「やっぱり、ムラサキさん大好きです」
「やっぱりってなんだ」
「再確認しただけですっ」
「俺がもっと強引な男だったらな…」
「そんなムラサキさん、いやですからね」