第7章 この世の良さ
「それでさ、ヒカリ」
「ん?」
「今回の誘拐、知ってたんじゃないの?」
「なに?!」
知っていた?誘拐されることを?ヒカリを見て答えを待つ。ヒカリは諦めたようなため息をついて口を開いた。
「知ってたって言うより、分かっていたって言った方がいいかな?」
「どういうこと?」
「あいつらに狙われているのは分かってたの、昔も何度か狙われた事があったし…それに相手はミニマムホルダーだったこともあってだんだんこっちのSPでも対処しきれなくなって」
「それで俺達を頼ってきた訳か…」
「はい、私も元々ファクルタース学園出身なんですよ?でも、あの教師の目的に気が付いた上の人達が私を学園から出して今の親に預けられたんです」
「まあ、ミニマムを持っているならファクルタースにいたのは当たり前だな」
ただの護衛ではなかったと言うことだ。それにナイスは気が付いていたと言うことか?
「ナイスは気が付いていたのか?」
「まあね、気が付いたのは結構後だったけど」
「ごめんなさい、騙すようなことしてしまって…ファクルタースの名を出したら受けてくれないと思って」
「はあ…」
何も知らなかった自分に対してのため息だった。
「そうだ!今度、皆で海に行きませんか?」
「海?!行く!」
「勿論、行く!ヒカリの奢りだよな?」
「ナイスくんはーまあ、そうだけどね」
お詫びのつもりで言ったのだろう。もうすぐ退院できるとレシオも言っていたし、羽目を外して楽しむのも悪くないだろう。