第7章 この世の良さ
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コンコン
「どうぞ」
ドアの向こう側でくぐもったヒカリの声が聞こえた。ドアを横に引き、中に入る。白い病人ようの服を着たヒカリが笑顔で迎えてくれた。
「ムラサキさんっ」
「どうだ?具合は?」
「はい、もうすっかり元気ですっレシオさんのお陰ですね」
ベットの脇になるパイプ椅子に座り、見舞い用に買ってきた果物のバスケットを棚に置く。
「全く…心配かけさせやがって」
「すいません…でも、そうしなきゃならなかったんですよ、それにあの教師も私が死んだことで希望がなくなったんですから」
「結果オーライってことか」
「そう言うことです」
考えて行動してるんだかしてないんだか。そこでヒカリにあの質問をしてみた。
「なあ、あの時、ヒカリは完璧に貫かれてたのに何故、傷口が貫通してなかったんだ?」
「…多分、皆のお陰なんです」
「皆?」
「私の血液、筋肉、皮膚、細胞が私の為に集まって修復してくれたんだと思います」
「そんな事が…」
「あれだけ力があったんですから、可能かもしれませんよ」
あれはヒカリのミニマムで修復されていたものだったのだ。
「それより、皆は来てないんですか?」
「…俺だけじゃ物足りないのか?」
「い、いえ!そう言うつもりじゃ…」
「冗談だ、他の奴らは後で来る…俺が先に来たのはヒカリに伝えたい事があったからだ」
「伝えたい事?」
そう、その為にわざわざ早く足を運んだ。ずっと言えずに胸の内に潜ませていた言葉。ヒカリの手をそっと掴み、言った。
「ヒカリ…お前が好きだ」
「!?」
びっくりしたように目を丸めるヒカリ。だったが、みるみる顔を赤くして俯く。
「わ、私もずっと言おうって思ってたんです…私も好きです、ムラサキさんが」
初めて芽生えた感情。静まり返った空間が数分続く。
「ヒカリー!お見舞いに来た!」
「は、はじめちゃん!」
沈黙はすぐ、はじめとナイスによって破られた。手に沢山のハンバーガーを持って。
「よっヒカリ、元気か?」
「うん、二人共、ありがとう」
「ハンバーガー食べて早く退院してね」
「う、うん、ありがとう」
沢山のハンバーガーをベットに乗せ始めた。流石のヒカリも笑顔がひきつっている。