第7章 この世の良さ
「何故…ミニマムを使わない…」
教師の胸ぐらを掴み、睨み付けながら問いただす。
「私のミニマムも…彼女にあげたからだよ」
「…!?」
まさか、そこまでするとは自分のミニマムさえ惜しまずヒカリに注ぎ込んだのだ。バカにも程がある。
「底無しの阿呆だな…お前は」
教師の鳩尾にありったけの力で殴る。一瞬で気絶し、倒れる。当分、目は覚まさないだろう…。だが、問題はヒカリだ。
すると出入り口が騒がしくなった。バタバタと足音が近付いてきたかと思うとハニーやレシオ、バースデイにスリーが駆け付けてきた。
「ヒカリッ!!」
ハニーが血相を変えて走り寄ってきた。
「…バカじゃないの…!マイティで10分先の未来を見たら…ヒカリがこんな事に…」
その場で膝をつき、泣き崩れる。レシオがヒカリの傷口をじっくりと見てから目を見開いた。
「待て…!何故だ、何故貫通していない…」
「え?」
レシオが傷口を覗き込みながら言った。貫通していない?そんな筈はない…確かにこの目で貫かれるヒカリを見たのだ。
「まだ、間に合う…!すぐ病院に運べ!」
レシオに指示され、ヒカリを担ぎ、病院へ。
********************
ヒカリ誘拐事件から二週間経った。
あの後、アート達警察により、教師は捕えられ、ヒカリはレシオにより、一命をとりとめた。だが、何故貫かれたはずの傷口が貫通していなかったのか。
「でも、良かったじゃないですかっヒカリさん生きてて」
事務所のカフェノーウェイにてコネコが嬉しそうに語る。
「うん、良かった!今度、沢山ハンバーガーあげるの」
「そのハンバーガー代はナイスから請求していいんだな?」
「え!?なんで俺!?それならムラサキにしろよ!」
「俺に振るな、ナイス」
何はともあれ、ヒカリが無事だったことに一安心だ。
「まだ、お見舞いには行ってないんですか?」
「最近まで面会は控えてくれと言われてたんでな、今度行くつもりだ」
「ムラサキ、やっとヒカリの顔が見られるからってにやついてんじゃねーよ」
「にやついてない!」
ナイスにからかわれ、若干機嫌が悪くなるがやっとヒカリに会える。早く会って抱き締めたい。