第6章 キスの効果
「…遅い…!」
かれこれ20分待ったがヒカリは一行に戻って来ない。人は皆花火を見ている為、屋台の方には人がちらほら…。
「どうしたんですかー?ムラサキさん」
「ヒカリが戻って来ないんだ」
「え?どこに行ったんですか!?」
ポツンと立っていた俺にコネコが話し掛けてきた。コネコもそれを聞いた瞬間、慌てたように聞いてくる。
「トイレに行ったっきり20分も戻って来ないんだ」
「…迷ってるんですかね?」
「ここはそんな広くないぞ、トイレだって5分で済む」
「まあ、女の子でも20分は掛かりませんよね…」
二人で喋っているとナイスとはじめが駆け寄ってきた。
「あれ?ヒカリは?」
「ヒカリがいない…」
ナイスとはじめにも同じような事を説明した。
「心配だな」
「ヒカリ、一人で寂しい思いしてるかも…」
「ムラサキ、連絡は?」
「したんだが出てくれないんだ」
「…怪しいですよね…ヒカリさんなら狙われても不思議はありませんしね」
「誘拐…とか」
皆の脳裏にその言葉が過るのは分かった。考えたくはないが可能性としては捨てきれない。とりあえず、トイレがある場所まで行ってみることにした。
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「いませんよっこっちには!」
「こっちもダメだ」
トイレには居らず、辺りを見渡すがそれらしき人物もいない。一体どこに行ったと言うんだ。
「ムラサキさん!」
そこにコネコが何かを持って戻ってきた。コネコの手には片方だけの下駄。よく見ればヒカリが履いていたものとよく似ている。
「これってまさか…」
「ヒカリのかもな」
一瞬にしてはりつめた空気になる。もう、これは誘拐として考えてもいいだろう。
「どこにあったんだ?その下駄」
「この裏に転がってたんです」
コネコが指さしたのはトイレの裏側だった。争った形跡はない。
「争った形跡がないってことは気絶させられたか抵抗しなかったのどちらかだよな」
ナイスは地面を見ながら顎に手を当て考えるそぶりを見せる。
俺がちゃんとしていればこんな事にはならなかった。前もそうだった…人探しの時もショッピングモールの時も…。