第2章 依頼人
「お金持ちのお嬢様…!」
はじめと言う少女は目をキラキラと輝かせて私を見つめてきた。
「成る程な…」
「えっと…私はこれで失礼しますね」
「今日からじゃないんですか?」
コネコさんが不思議そうに首を傾げた。
「今日は依頼に来ただけなので、明日またこちらに顔を出します」
「…ちょっと待て」
「え?」
帰ろうとドアに向かっていたところにムラサキさんが私の背中に声をかけた。何だろうと思い、振り替える。
「それじゃあ、護衛の意味も彼氏役の意味もないだろう」
「それもそうですが…来ていきなりは…」
申し訳ないと思い、明日からにしようと考えたのだが、ムラサキさんがあっさりそれを否定した。
「変なところで謙虚だな、お前は」
「いや…」
「家まで送ってやる、依頼だからな」
「すいません…じゃあ、お願いします」
ムラサキさんのキツい目付きに何も言い返せず、ハマトラ探偵事務所を後にした。