第6章 キスの効果
「そ、そうですね!濃いめの色とかいいですよね!」
ムラサキさんから黒の浴衣を受け取る。赤い金魚がよく映えていた。なかなかのセンスをしている。
「ちょっと着てみますね!」
「あぁ」
《ムラサキside》
ヒカリがいつも通りなので少し押しに入ってみた。少し慌てた様子を見せていたのでちょっと調子に乗ってみようと考えた。
「ムラサキさん、どうですか?」
考え事をしている間に着替えが済んだのか俺の目の前に立っていた。やっぱり、よく似合っていた。
「よく似合ってる」
「良かったっ浴衣着るなら髪もまとめた方がいいですよね?…えーっと、髪止め…髪止め」
棚の上にある髪止めを手にして降ろしている髪を結い上げる。今まであまり見ることのなかったヒカリのうなじが露わになる。
「普段縛らないからなかなか…」
結うのに手間取っているのかなかなか結べないでいるヒカリの手を取り、代わりに自分が髪を結う。
「すいませんっムラサキさん!」
「いや、気にするな…」
そう言えば、ヒカリの髪を触ったのも初めてだ。艶やかなブロンドに近い髪、無償にうなじに目が行く。スラッとした綺麗な首筋。
「ムラサキさん…?あの…」
「…悪い、ボーッとしてた」
どうにか衝動を抑え、髪を結い終える。
「他のも着てみていいですか?」
「あぁ」
浴衣を着たヒカリと隣を歩くことを想像するだけで五月蝿いくらいに心臓が早鐘を打つ。もう誤魔化しが効かないくらい、俺はヒカリが好きになっていた。
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選んだのは紺に紫陽花が彩られた浴衣だった。
「今日は付き添って下さってありがとうございますっ」
「礼なんかいらん、彼氏役として当然のことをしたまでだ」
素直にヒカリの為だと言えないのがなんとも悔しい。
「ふふっそうですね」
帰りもまた電車に乗り、帰宅。ヒカリを家まで送り、自分も帰った。いつになったらこの気持ちをヒカリに伝えられるだろうか。