第4章 子供になっても…
「ハァハァ」
町中を走りながら回りをキョロキョロと見渡す。ムラサキさんの姿はどこにもない。
さっき出来た傷で思うようにミニマムが使えない…。
使いたい時に使えないこのもどかしさ…早くムラサキさんを見つけて帰ろう。きっと迷子になってる。景色が違って見えると言っていたからきっと…。
「ムラサキさん…っ」
息があがり、立ち止まる。苦しく空気を肺に入れる度、喉の奥が痛くなるような感じが襲う。ポツリと一滴の雨が降ってきた。それはたちまち沢山、降ってきて私の体を濡らす。
「捜さなきゃ!」
髪が肌にまとわりつき、鬱陶しい。バシャバシャと水溜まりもお構い無しに通る。
…なんでこんなに必死なんだろう…
まだ、一緒に居てあまり時間は立っていない。ムラサキさんは赤の他人で接点があるわけでもない。
それなのに…
「いつから好きになったんだろ…」
いつの間にか町中を抜けて河川敷に来ていた。再び、立ち止まり息を吸う。息を整えながら辺りを見渡す。…橋の下に小さな人影が見えた。体育座りをして体を縮込ませていた。
「ムラサキさんっ!!!」
芝生の下り坂を降り、彼の元へと走る。ムラサキさんが私に気が付く前に私はムラサキさんを抱き締めた。
《ムラサキside》
自分の名を呼ばれ、その声がヒカリのものであるのはすぐに分かった。自分が振り替えるより先にヒカリが俺を抱き締めた。
「良かった…ムラサキさん…」
ヒカリの体は雨のせいか冷たく冷えていた。
「なんで…こんなになるまで…」
「心配だったからに決まってるじゃないですかっ」
体が小さいせいかヒカリの丁度胸辺りに顔が埋まる。場違いだがドギマギしてしまう。
「…なんでいなくなったんですか…」
ヒカリは俺を抱き締めたまま、問うてきた。
「…」
「答えて下さい…」
「何も出来なかった自分が腹立たしかったんだ…俺のせいでヒカリに怪我を追わせて…挙げ句こんなになるまで捜させて…」
怖くなって逃げ出したのだ。責められるのではないかと。
「ムラサキさんがいなくなったら…誰が私を守るんですか…っ」
「他の奴がいるだろ…」
他の奴…そう、俺より強いナイスがいるじゃないか。あいつの方がよっぽど強い。それは前にも思い知らされた。ホントは…
「最後まで…私を守って下さい…!ムラサキさんじゃなきゃ嫌なんです!」