第2章 依頼人
「だ、だって…」
身を起こし、伊吹が持ってきてくれた紅茶が入ったカップを受け取る。今日はストレートティーらしい。
「全く、彼氏が出来たなど口にしなければ良かったのですよ」
「その通りね…」
まあ、そのお陰でお見合いの話はめっきり来なくなった。
「それで?どうするんです?パーティは」
「行きますよーお母さんに釘差されちゃったし」
伊吹にも私がハマトラに依頼をしていることは言ってない。言ったら言ったで結構、面倒なのだ。
「じゃあ、お嬢様のドレスと彼氏さんの衣装、準備しておきます」
「うん、ありがとう」
パーティの話だけでこんなに疲れるなんて自分でも信じられない。紅茶を二口飲んだだけで伊吹にカップを返し、布団に潜る。
「あ、お嬢様」
「なーに?」
「その彼氏さん、明日連れてきて下さいね?採寸をしなくてはいけませんから」
「わかったー…」
瞼が重くなり、睡魔が私を夢の中へと誘う。