第4章 虹色のパン
「神様〜、やっぱりあのお城の王女様に、食べ物貰った方が良かったですよ」
誰もいないような路地裏から、そんな声が聞こえた。
この路地裏はゴロツキって奴らが多い。前にホームレスのおじちゃんから聞いたから知っているんだ。だから僕は弟に待っててと言って置いて先に路地裏を見に来た。
そしたら一人でぶつぶつと、まるで誰かに話し掛けているみたいに喋っている白い男の人がいたから、僕は絶対怪しい人だと思った。
「ねぇ、お兄ちゃん。そこで何してるの?」
僕は勇気を持って声を掛けてみると、白い男の人は青い瞳を大きく開いて僕の方を見下ろした。
「こんちゃっちゃ、おらふくんやで」
「おらふくん……?」
初めて聞く名前だった。しかもこのお兄さん、ゴロツキやホームレスの人とは明らかに雰囲気が違う。白い格好は汚れ一つもなくて綺麗だし、髪の毛だって整っている。それに肩には丸いペットみたいなのを乗せてるし、どう見てもここら辺の人ではない気がした。
「お兄ちゃん、ゴミ探しに来たんじゃないの?」
「え、ゴミ探し?」
僕がそう聞けば、お兄さんはきょとんとした顔で僕を見つめ返す。だから僕が目の前のゴミ箱を指すと、あー、これゴミ箱なんやと呟いた。
「お兄ちゃん、お腹空いたよぉ」
その内に、待たせて置いたはずの弟がやって来てしまった。
「ちょっとバカ、待ってろって言っただろ?」
「だって、お腹空いたから……」
ぐぅと弟の腹の虫が鳴る。それもそのはずだ。俺たちはもう何日もまともな物は食べてなかった。だからって、俺も腹が減ってるのに、弟だけズルイ。