第4章 虹色のパン
「あれ、二人ともお腹空いたん?」
とおらふくんとやらが僕たちに目配せをする。乞食は何度もしてきた。僕たちはまだ子どもだから、このお兄さんに乞食したら何か食べる物をくれるかもしれない。
「そうなんだ、お兄さん。僕たち、食べる物なくて、今からそのゴミ箱から食べ物を探そうとしてたところなんだ」
「ええ、このゴミ箱から食べ物探そうとしてたん?」
おらふお兄さんはそう言ってゴミ箱の蓋を開けた。腐敗臭やらなんやらの臭いで鼻をつまみたくなる。それはおらふお兄さんも同じだったみたいだ。
「ここから食べ物探すのはよくないよ。みんな腐ってるやん」とおらふお兄さんは言った。「そうや、僕が食べ物を作ってあげるよ。ちょっと待っててな」
「お兄さん」
そう言っておらふお兄さんがどこかに行こうとしたから、僕は呼んで引き止めた。僕、知ってるんだ。人に何かもらう時はタダでは貰えないって。だから聞いておかなくちゃいけない。
「食べ物くれる代わりに、僕は何を払ったらいいの?」
お金はない。じゃあ何を払うの? 一ヶ月お店のお手伝い? 火の輪くぐり? それとも……。
「何も払わなくていいよ? 僕はね、雪だるまやからね」
「……え?」
僕はおらふお兄さんが何を言っているか分からなかった。だけどお兄さんは楽しそうに、目の前にカラフルな台をどこからともなく取り出して来て僕はびっくりした。
「わぁ、お兄さん、これなぁに?」
僕が何か言う前に、弟が飛び出して来てお兄さんの台を除き見た。こら、勝手なことしたらダメだよと僕が言うと、おらふお兄さんは明るく笑った。
「これはね、作業台って言うんよ。僕は虹の雪だるまやからね、こうすると……」
「わっ」
僕は弟と同時に声を出してびっくりした。おらふお兄さんの手と作業台から、虹色のパンが出てきたからだ。
「わぁ、パンだ!」
弟は喜んでパンを食べようとしたけれど、僕は止めた。