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雪だるまの虹

第4章 虹色のパン


「これな、ただの小麦なんやけど、この作業台で作ったら虹色のパンになるんよ」とおらふは僕に小麦の束を渡してきた。「作り方教えてあげるよ。やってみよ」
 独特な発音をするおらふお兄さんは、そう言って僕たちにパンの作り方を教えてくれた。弟もやってはみたけど、ちょっと難しかったみたいだから僕が代わりにやってあげた。大きくなったら一緒に作ってあげてなっておらふお兄さんと約束して。
 そうして僕がやっと虹色のパンを作り上げ、あとは焼くだけだねっておらふお兄さんを振り返ったら、そこにはもう、白い姿はどこにもなくなっていた。お兄さん? 呼び掛けてもどこにもいない。だから僕は、こう思うことにした。
 あのお兄さんは、雪だるまの妖精だったんだって。
 僕はお兄さんに言われた通り何回もパンを捏ねた。そしたらホームレスのおじちゃんが石で作った窯を用意してくれたから僕はやっとパンを完成させることが出来た。僕が作るパンは全然虹色にならなかったけど、それでもおじさんも弟も美味しいって言って食べてくれたから、近くにいた鳥や猫にもお裾分けした。
 その内に僕と同じで今日食べるのも大変な友達にもパンをあげた。みんなで食べるのはもっと美味しいし楽しかった。それがだんだん大人にも振る舞うようになって、僕たちはパン屋さん家の子どもになった。
 それからは僕はずっとパンを捏ね続けて焼き続けた。僕のパンはもう二度と虹色になることはなかったけど、お客さんに大好評で僕のパンは大会に出場して優勝した。
 弟は虹色の小麦の生産にようやく成功して、僕たちは一緒に、虹色のパンを作る開発を始める。
 そして僕たちは二人きりになるとあの雪だるまなお兄さんの話をするんだ。僕たちだけの秘密の話を。
「路地裏に雪だるまの妖精がいたんだ」

 おしまい
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