第3章 戴冠式の色
「ううん、なんでもは出来ないんやけど」おらふくんは正直に答えた。「お姉さんの望む好きな色のドレスに変えることは出来るで?」
「え」
ここまで聞いて私はようやく、彼は普通の人間ではないのだと察した。ドレスに悩んでいることなんて、侍女にすら言わなかったのに、なぜ彼は知っているのか。それとも、心の中を読んだのだろうか? それもこれも、彼が雪だるまだから成し得ることなんだろうか。
「お姉さん?」
「だったら……」私はほぼ無意識に言葉が口をついていた。「私の好きな色のドレスを持ってきてよ」
我ながら、なんてワガママなのだろうと思った。ここで初めて出会った彼に、長年連れ添った侍女にすら分からない私の好みのドレスを選ばせる。しかも私にも、どのドレスにしたらいいかも分かっていないのに。
「分かりました」おらふくんは嫌がる顔一つせず頷いた。「ドレスはどういう時に着るん?」
そうして、彼はいくつか私に質問を投げた。私は答えられるだけ答えたが、好きな色だけは分からなくて思わず「それはあなたが探しなさい」なんて言ってしまった。
さすがに彼にそんな対応をしてしまったことは理不尽だと思ったが、私があまりにも困った顔でもしていたのか、もう聞いてこなくなった。
それから彼はドレスの中へと姿を消した。このドレスルーム、そんなに広くはないはずなんだけど……と思っていると、おらふくんが小さなドレスを持ってきて戻ってきた。
「ちょっと、それは子どもサイズよ」
「でもこれ、とても大事そうに飾ってたから」
「……え?」
おらふくんに渡された子どもサイズのドレスは、氷のように透き通るような水色をしたドレスだった。それを見つめていると急に思い出したのだ。父との思い出を。