第3章 戴冠式の色
「こんちゃっちゃ、おらふくんやで」
「だ、誰……?」
侍女でも執事でもなさそうな格好をした白い格好をした男性のような人。こんな人は見たことがない。
「だから、僕はおらふくんやで?」
「お、おらふくん……?」
「うん。雪だるまなんやで♪」
人の家の、しかも城内に侵入しているというのに悪びれる様子もないままにこにこ笑いながらおらふくんとやらが答えた。てか、自分のことを「くん」付きで名乗るなんて、ちょっとおかしいのかもしれない。
「警備の兵を呼ぶわよ……?」
それは、せめて自分から逃げてくれるように言った言葉だった。すると、おらふくんは慌てた様子でその大きな目をさらに大きく見開いた。
「待って待って、お姉さん。僕、お姉さんの願いを叶えるために来ただけなんよ」
とおらふくんはまた訳の分からないことを言った。
「私の願い……?」
「そうやで♪」
私が疑っているとも知らないのか、おらふくんは無邪気そうに笑う。いやいや、人の部屋に無断で上がって置きながら、無邪気も何もないのだが。
「なんでも願いが叶えられるってこと?」
そんなはずはない。きっと、彼は兵に捕まりたくないから非現実的なことを言ってるんだと私がわざとそういう言い方をすると、おらふくんは首を振った。