第2章 失恋レインボー
するといとも簡単に私の腕の中に飛び込んできてタンスから雪だるまが下りてきた。抱きしめるとひんやりしている。暑い夏にはぴったりの保冷剤になりそうだ。
「あ、ありがとー、お姉さん!」
にっこりと笑う不法侵入者はあまりにも無邪気だったから、私もなんだか自分が落ち込んでいることがどうでもよくなって、つられて笑った。その間にぴょんっと跳ねて、雪だるまは彼の頭の上に飛び乗った。
「お礼に何かするよ!」
彼は愛嬌のある笑顔でそう言ってきた。別に大したことはしていないんだけれども、この奇妙な出会い方もきっと何かの縁だと思うことにして、私はこう質問をした。
「何が出来るの?」
「そうやなぁ……」天井を仰いで彼は考える素振りを見せた。「僕、雪だるまやから、色んな色に変えれるで?」
「ん……?」
聞き返そうとするも、彼はきょとんと見つめ返すばかり。ここで私はようやく冷静になった。そもそも不法侵入している時点で、この人はおかしいのだ。