第17章 料理を二度と作らないと決めた日(潔・凪・凛・ネス)【後編】
糸師凛
沈黙が流れたと思えば凛ちゃんはゴミ箱に手を伸ばすと、焦げてしまっていた唐揚げを摘みそれを口に放り投げた。
『ちょ、汚いよ!?』
「汚くねぇ。美味い。🌸の料理は美味い」
そう言いながら凛ちゃんは唐揚げを食べてしまうが、その目は薄ら涙目となっていたのが気が付いた。顔は悲しそうに歪んでいてなんでそんな顔をしているんだろうと戸惑ってしまう。
『凛ちゃん、無理に食べなくていいよ。そんな不味い料理』
「不味くねぇ。美味い」
そう言いながら凛ちゃんは私の顔を見ると、まるで怒られた子供のように視線をキョロキョロと漂わせてから、唇を少しだけ震わせていた。
「ごめん…。あんな事言って悪かった」
『凛ちゃん…』
「料理が不味いから作るなって、意味じゃなかった。ただ、🌸が料理苦手なのに俺が食べたいって言うから作るんだろうと思って。無理に作らなくてもと思って…」
その言葉にかなり驚いてしまった。どうやら凛ちゃんは無理に作らなくて良いと言う意味であの言葉を言ったらしい。相変わらず言葉選びが下手だなぁと思いながら笑ってしまった。
『凛ちゃん言葉の選び方が下手だよ。あれじゃ、私傷付いちゃうよ』
「……ごめん」
『私別に無理に作ってないよ?あんな焦げたご飯を美味しいって食べてくれるのが嬉しくて、次こそは今までより美味しいの凛ちゃんに食べさせる!って思って作ってるの』
凛ちゃんは泣きそうな目を見開かせた。
『だから、これからまた凛ちゃんに喜んでもらえるように料理作っていい?』
「作って、ほしい…あと、腹減った」
『直ぐになんか作るね!』
そしてまたちょっと焦げたご飯を作れば、凛ちゃんは嬉しげに「美味い」って言いながら食べてくれた。