第35章 結婚指輪を捨てた日(凛・烏・氷織)
烏旅人
「結婚なんてせな良かった」
喧嘩がヒートアップした時に旅人からそう呆れた声で言われた。その言葉は喧嘩の勢いだとしても言われたくない言葉なのに…そう思うと涙が零れていき思わず叫んでしまった。
『じゃあもうこの指輪要らない!!』
旅人が顔を真っ赤にしながらプロポーズした時にくれた結婚指輪。その指輪を私はゴミ箱に投げ捨てた。
「おまっ!?🌸!お前何しとんねん!」
『知らない、もう離婚する!』
「はぁ!?」
『旅人が言ったんじゃん!結婚なんてしなきゃ良かったって!』
そう言って私は寝室に向かうとスーツケースを取り出して適当に荷物を詰める。もう離婚するならこの家に居たくないと思いながら荷物をまとめていれば後ろから旅人に抱き締められていた。
「🌸、俺が悪かった。せやから離婚するとか言わんとってくれ……」
そう言いながら抱きしめてくる旅人の体は震えていた。
「言うたダメな事言うてすまん…。もう言わんから、離婚するとか言わんとってくれ」
弱々しく言う旅人に私は思わず後ろを振り向けば旅人は泣きそうな顔をしていたた。
『自分で言ったくせにそんな顔しないでよ…』
「すまん」
『もう言わないって約束して?』
「約束する、絶対言わん」
『私もごめんなさい。離婚するとか言って』
すると旅人は表情を明るくさせると直ぐに私の左手の薬指に指輪をつけた。
「もうお前にこれ外さたりしぃひん。誓う」
そう言って旅人は指輪にキスを落とした。