第35章 結婚指輪を捨てた日(凛・烏・氷織)
糸師凛
「喧嘩ばかりて面白くねぇ。こんなんなら結婚なんかしなきゃ良かった」
喧嘩している最中に呆れたようにそう凛ちゃんに言われた。絶対に言って欲しくなかった言葉なのにと思いながらじわりと涙が浮かんだ。
『じゃあ離婚しよっか』
そう言って左手の薬指から指輪を抜き取るとゴミ箱に捨てた。
「は…?」
『指輪も要らない。もう離婚するから要らない』
そう言って家にいても気まずいだけだからと思い家を出るために玄関へと向かうおうとすれば、凛ちゃんに腕を勢いよく掴まれた。驚いて振り向ければ顔面蒼白にしてオロオロとしている凛ちゃんの姿があった。
「なんで…」
『なんで?だって凛ちゃんが言ったんじゃん。結婚なんかしなきゃ良かったって。つまり私との結婚に後悔してるんでしょ?なら離婚しようよ』
自分の言った言葉にまた涙が溢れてしまう。すると凛ちゃんは目を見開いてからその目から涙を溢れさせていく。
「違う、後悔してない…してねぇ。勢いで言って…離婚したくねぇ…頼む🌸」
何時もより弱々しい声で言う凛ちゃんは震えていた。
『もう言わない…?』
「言わない…約束する」
『絶対だよ?』
と言えば凛ちゃんは頷いてから私の左手の薬指に結婚指輪を付けた。
「もう言わねぇから、捨てるな…」
『うん…私もごめんね』
「ん、俺もごめん…」
そう言って凛ちゃんはキスをしてきた。