第3章 ロールキャベツ男子
「ねぇおんりー、何か手伝う?」
そわそわし出したおらふくんが、ひょこっと顔を出してキッチンを覗き込む。大丈夫、と答えるとそっかぁとおらふくんが再びリビングに戻るが、ちょっと退屈そうだ。
おらふくんは多分じっとしてるのがあまり得意ではない。スマホを弄っているのも性ではないのか、その内リビングを探検し始め、カーテンの裏をめくったりし出した。
「そんなところに何もないよ」
と俺が言えば、振り向いたおらふくんが大きな目をして、じゃあどこか違うところに何か隠してるん? って聞いてくる。そういう意味じゃない。そういう意味じゃないんだけれども、そんなことを聞いてくるおらふくんがなんだかおかしくなって少し笑ってしまった。するとおらふくんが笑うから、もうどうでもよくなってきた。
そうこうしている内に、ロールキャベツをあとは煮込むだけとなった。本当は前日から煮込むといいみたいなんだけど、さすがに時間がなくてそこまでは出来なかった。
「よし……」
俺は一人呟き、おらふくんはどこに行ったのかなとキッチンカウンターからリビングを見渡すと、あれ、いない?
かと思えば、キッチンの壁の横からおらふくんが飛び出してきて近づいた。
「もう少しで出来る?」
「うん、もう少しかな」
「いい匂いやから来ちゃった」
と言いながら、おらふくんが俺の後ろに回り込んだ。それから当たり前のように俺の腰に両腕を回してきてびっくりする。おらふくん? 俺が呼んでみてもくすくすと笑い声を返すばかり。俺はおらふくんの腕に触れながらしばらく温もりを堪能したかったが、もう少し待ってと言って離れた。
「え〜、ええやん〜」
「焦げてもいいの?」
「おんりーの作ったものなら焦げても食べるよ!」
「はいはい」
そんなふうに素直に俺も言えたなら、おらふくんみたいに生きていたのかなぁ。そうしたら恥ずかしがらずに好きって言いたいよね。別に俺は、言わなくてもこの無邪気な雪だるまな人に、惹かれていたと思うけど。
「おんりー?」
「ん……?」
「鍋からなんか溢れてるんやけど」
「あ”っ」